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ヒーロー小説の冒頭を変えてみた3



前回書き直したヒーロー小説の冒頭を、もう一度書き直しました。
後半部分のリアリティがないという指摘を受け、世界観の説明がただの情報になっているんじゃないかと考え、学生の日常という視点から世界観を書いてみました。

現実感→納得感→説得力→自分たちの日常との比較

というのが、自分なりに考えて辿り着いた結論。
色々悩んだけど、これくらいしか思いつかなかった。


<本文>の『●●●●』以降が改稿箇所です。


<本文>


『あなたが本当に困った時は、ちゃんと助けてと言える大人になりなさい。そしたらきっと、正義のヒーローみたいな人が現れて、あなたを助けてくれるわ』

おふくろのその言葉が嘘だということを、オレはおふくろから教わった。
血に塗れた手で両親の死体を見下ろした時、オレは悟ったのだ。
この世界では、誰かに助けを求めたところで、誰も助けてくれない。
だからオレは、奪われる側から、奪う側へと回ったんだ。



普段は忙しなく人が行き交うスクランブル交差点。
今そこには、オレとその女しかいなかった。
おぞましいドクロのマスクで顔を隠し、黒のロングコートをなびかせるオレに対し、女は虹色に輝くゴーグルをつけ、純潔を示す白のスーツを着こなしていた。
立場も、姿も、全てが両極に存在する。
それが、オレとこの女の関係だった。

「年貢の納め時だな、正義のヒロイン」

オレは、どこか芝居がかった口調で、そう言った。

「長かった戦いも、これで終わりだ。悪の組織が人間共を手中に収めるのは時間の問題。あとは、正義を振りかざす鬱陶しい小バエを叩けば、我々の勝利だ」
「酷い言いぐさね。でも、それはこっちも同じことよ。あなたを倒せば、悪の組織は事実上壊滅する。そうなれば人間の勝利よ」

相変わらずの減らず口だ。
もはや情勢は大きくこちら側に傾き、万に一つの勝機もないというのに。

「最後通告だ。投降し、我が軍門に下れ。お前も我々と同じ、人にはない力を持って生まれて来た同志だ。同じく人に忌み嫌われ、排斥されてきたお前が、これ以上人間に義理を通す必要などないだろう?」
「あるわ。それが正義の務めだもの」

女は淡々と、さも当然のように言った。

「そうか」

オレは力強く握っていた拳を、ゆっくりと解いた。

「なら、その正義を今ここで打ち砕いてやる」
「やってみなさい。人を信じ、希望を信じた私の拳は、そう簡単に砕けやしないわよ」

その言葉が契機だった。
オレ達は一気に駆け寄り、その拳を、互いに向けて振り上げた。



●●●●

【20年後】


スクランブル交差点は、あの時とは違い、大勢の人でごった返していた。
自分の職場や学校へと忙しなく向かう彼らは、もはやここで大規模な闘争が起きたことなどなど覚えていないだろう。

オレはビルの屋上から、アリのように群がる彼らを見下ろしていた。

「お前が守りたかった奴らは、お前のために祈る時間もないってよ」

20年前の今日。
オレとの死闘を経て、あの女は死んだ。
しかし、彼女の墓はどこにもない。その死を悼む者すらいない。
それが、自分の身を挺してまで何かを守ろうとした正義のヒロインの、なれの果てだ。

オレは懐からユリの花を取り出し、それを外へと放り投げた。



◇◇◇


「細谷君、おはよう」
「おっす細谷!」
「細谷君、おっはー! 相変わらずイケメンだねぇ」

オレが教室に入ると、いつものようにクラスの人間共が群がってきた。
一度こうなると、収拾がつくまでは移動することすら敵わない。
自分の席に座ることもできず、どうでもいい挨拶を延々と聞かされるこの時間が、オレは大嫌いだった。

「やあ。みんな、おはよう」

一段落してから、オレはにこやかにそう返した。
彼らはそれを親愛の証だと信じ込み、顔をほころばせる。
人間の群れが割れて一本の道ができあがり、ようやくオレは、自分の席に着くことが許された。

クラスで一番の人気者に、笑顔で挨拶される。
それが、自分の高校生活を穏やかに過ごすために必要不可欠なものだと、こいつらは信じていた。
まったくもって下らないが、これが人間共の社会だ。そこで生活していく以上、オレも最低限、こいつらに合わせなければならない。

オレの名前は細谷守。17歳。
両親は仕事の都合で海外にいて、現在は一人暮らし。
ルックスは芸能人にも劣らない、真面目で爽やかな好青年。
成績優秀で、スポーツ万能で、およそ非の打ちどころのないクラスのムードメーカー。
……というのが、今の設定だ。

その真の正体は、20年前、悪の組織を結成し、人間共を恐怖のどん底に陥れた男。
人間との最終決戦でヒーローを打ち破り、事実上の征服を果たした悪の組織の親玉だ。
古来から語り継がれる物語によると、悪は滅びるものらしいが、現実は違う。
悪は生き残り、正義は滅びた。
怪物(フリークス)と罵られてきたオレ達は、ランスという新しい名前を手に入れ、人間と同じ……いや、それ以上の市民権を手に入れたのだ。

「ねぇ、見てよ。あのコウモリ女、また細谷君のこと無視してる」

オレが席に座ると、当然のように輪になって集まるクラスメート達。その中で、唯一その異常な輪の中に入っていない女子生徒がいた。
日隠リア。通称、コウモリ女。
うなじほどにまで伸びた黒髪は、何の手入れもしていないことが一目で分かる。背筋を曲げて座る姿勢も決して健康的とは言えず、非常に暗い印象を周囲に与えている。

「ホント、何様なんだろうね」
「あれじゃね? みんなと違うことしてる私ってかっこいい! みたいな」
「中二かよ……」

茶髪の女子が、日隠リアの席にずかずかと近づいた。

「ねぇ、コウモリ女。ジュース買ってきてよ」

日隠リアは、ずっと項垂れたまま動かなかった。

「無視すんな」

女子は、日隠リアの頭頂部を殴った。
それでも動く気配のない彼女に苛立ち、今度は彼女の椅子や机を蹴り始める。

「あかり! もうその辺で……」

クラスメートが、ちらと教室の入り口に目をやった。
そこには、ちょうど今しがた教室に入ってきた担任教師がいた。
女子は一瞬だけ動揺するも、すぐにあっけらかんとした笑顔で手を挙げた。

「あ、すみませーん! ただのいじめなので、スルーしてくださーい!」
「ちょ、ちょっと! 何言ってるの⁉」
「大丈夫だって。これってあれでしょ? ヒーロー活動禁止法。当事者同士の争いに、私的な理由で干渉できないってやつ」

教師はじっと彼女達を見つめていたが、やがてにこりと微笑んだ。

「……そう。程々にね」

そのあまりに無常でずれた発言に、噴き出す者までいた。
だが、この教師の判断は正しい。
ヒーロー活動禁止法に抵触すれば、どのような理由であれ、第一級の国家反逆罪として厳罰に処されることとなるからだ。

誰かを助けることが悪になるこの時代では、一度落ちた人間は希望を持つことすらできない。
だからこそ、クラスメート達はそうならないよう人気者にすり寄り、落ちてしまった人間を見て、ほっと胸を撫で下ろすのだ。

「みなさんもご存知かと思いますが、今日は特別な日です」

ホームルームの時間。担任の教師が、厳かな調子でそう切り出した。

「20年前の今日。この国の未来を大きく左右する歴史的事件がありました。それが『ランス闘争』です」

その呼称を聞くだけで、オレは当時の出来事を鮮明に思い出すことができた。
燃え盛る街並み。折り重なる仲間の死体。涙ながらの咆哮。
それはまさに、地獄と呼ぶに相応しいものだった。

「ランスとは、強化細胞といわれる皮膚で、自在に身体を覆うことのできる特異体質者です。その力はこの国の発展のためにも、非常に有益で素晴らしいものです。しかし当時の人間達は、その力を理解していなかった。理解できないものを必要以上に怖がり、彼らに暴力を振るってきたのです。ただ穏やかに生活していたランス達は、その日、とうとう怒り、人間に反発した。そうして起こったのが『ランス闘争』です。この闘争で、人間達は目を覚ましました。ランスにこの国を託し、人間とランスが共に暮らせる世界を作ることを約束したのです」

よくできた物語だ。
しかし、この物語は現実である。都合の悪い部分を全て抜いた、見栄えの良い物語。
古来から語り継がれる物語によると、悪は滅びる。
ならば、自分達が正義になり替わればいい。悪と罵られ、怪物(フリークス)と蔑まれた歴史を葬り去ればいい。

「君達は、ランス闘争以降に生まれた第二世代です。第一世代である私達と同じ過ちを繰り返してはいけません。そのためにも、こうして定期的に歴史を振り返ることが重要なのです。ランスが生きる権利を保障するランス保護法とヒーロー活動禁止法は、今のこの国の要なのです」
「先生~。ってことは、そもそも人間が悪いことをしたってことですか? ランスは正義で、100%悪くないってことですよね」

教師は、にこにこと笑っている。
しかし、教卓に置かれていた握りこぶしが、小刻みに震えていた。

「……違う」
「え?」

教師は、拳で教卓を叩いた。

「奴らはその力を行使し、虐殺を楽しんでいた。ずっと以前から、我々を見下していたんだ。奴らを排除しようとした我々人間の判断は正しかった! 今も尚、奴らは秘密裏に人間を非人道的な方法で弄んでいる。奴らは今も昔も、怪物(フリークス)だ‼」

途端、教室の隅に設置されていた監視カメラが、教師の方へ向いた。

ビーーーー、ビーーーー、ビーーーー‼

けたたましいアラートが鳴ったかと思うと、天井から無数のアームが現れ、速やかに教師を拘束した。

『ランス保護法に抵触しました。ランスへの不当な差別発言は捕獲対象です』
「やめろ! 俺は本当のことを言っただけだ! こんなのは人権侵害だろ‼」

教師は必死に暴れているが、機械の腕はびくともしない。
しばらくすると、武装した兵士が到着し、教師の手首に手錠がはめられる。

「奴らは俺の家族を殺した! こんな奴らが正義だなんて、俺は絶対に認めないぞ‼」

最後の最後に、彼はそう言い残して連行されていった。
ご愁傷様だな。
だが、危険思想の持ち主を野放しにしておくわけにはいかない。
オレは薬品が入っていた瓶を、手のひらの上で転がした。

「先生、家族を殺されたの? かわいそう……」
「でもはじめに攻撃したのは人間でしょ? 自業自得じゃん」
「今はランスが人間を守ってくれてるんだぜ? 味方に文句言ってどうするんだっての」

オレは思わず鼻で笑った。
守る奴らが、守られる奴らの味方とは限らない。
しかしそれは、オレ達にも言えることだ。
守られる奴らが、守る奴らの味方とは限らない。
オレの脳裏に彼女の顔が浮かび、すぐに消えた。

20年前に比べれば、今の世の中はずいぶんとマシになった。
争いもなく、差別もない。少なくとも表面上は、平和を維持している。
けれど確かに、世界は緩やかに悪に染まりつつあった。

自習を命じられ、教師のいなくなったクラスで、再び日隠リアへのいじめが横行する。
彼女は何も言わず、項垂れていた。けれど机に置かれたその手は、先程の教師のように、ぎゅっと固く握りこぶしを作っていた。

時々、ふと思うことがある。
あの戦いで、もしも彼女が勝っていたら、どうなっていただろうかと。
未曽有の危機から人間を救った英雄として、ランスは認められたのだろうか。
もしもそうなっていたら、きっと今のような閉塞的な世の中ではなく、もっと……

「……なんてな」

“もしも”なんて、暇人か馬鹿が考えることだ。
そんなことをしても過去は変わらないし、死んだ奴は生き返らない。
だから、オレはそんなことを考えない。
過去の亡霊が残していった“しこり”も、この胸に去来する空虚な想いも、全て幻想だ。

20年間、同じことを考え、同じ結論を出してきた。
けれどまた、来年のこの日は、きっと同じことを考える。
まるで呪いだなと、オレは一人、教室の中で自嘲した。


ヒーロー小説の冒頭を変えてみた2


『正義のヒロインを悪の組織のボスが育ててみた』の冒頭をもう一度変えてみた。
読者がどういう物語なのかを想像できるようにすることを意識したが、その分、文字数が長くなってしまった。

計2500文字で、最初の過去の戦いだけで770文字。
冒頭千文字だけを見れば平凡過ぎる気もする。



<本文>

『あなたが本当に困った時は、ちゃんと助けてと言える大人になりなさい。そしたらきっと、正義のヒーローみたいな人が現れて、あなたを助けてくれるわ』

おふくろのその言葉が嘘だということを、オレはおふくろから教わった。
血に塗れた手で両親の死体を見下ろした時、オレは悟ったのだ。
この世界では、誰かに助けを求めたところで、誰も助けてくれない。
だからオレは、奪われる側から、奪う側へと回ったんだ。



普段は忙しなく人が行き交うスクランブル交差点。
今そこには、オレとその女しかいなかった。
おぞましいドクロのマスクで顔を隠し、黒のロングコートをなびかせるオレに対し、女は虹色に輝くゴーグルをつけ、純潔を示す白のスーツを着こなしていた。
立場も、姿も、全てが両極に存在する。
それが、オレとこの女の関係だった。

「年貢の納め時だな、正義のヒロイン」

オレは、どこか芝居がかった口調で、そう言った。

「長かった戦いも、これで終わりだ。悪の組織が人間共を手中に収めるのは時間の問題。あとは、正義を振りかざす鬱陶しい小バエを叩けば、我々の勝利だ」
「酷い言いぐさね。でも、それはこっちも同じことよ。あなたを倒せば、悪の組織は事実上壊滅する。そうなれば人間の勝利よ」

相変わらずの減らず口だ。
もはや情勢は大きくこちら側に傾き、万に一つの勝機もないというのに。

「最後通告だ。投降し、我が軍門に下れ。お前も我々と同じ、人にはない力を持って生まれて来た同志だ。同じく人に忌み嫌われ、排斥されてきたお前が、これ以上人間に義理を通す必要などないだろう?」
「あるわ。それが正義の務めだもの」

女は淡々と、さも当然のように言った。

「そうか」

オレは力強く握っていた拳を、ゆっくりと解いた。

「なら、その正義を今ここで打ち砕いてやる」
「やってみなさい。人を信じ、希望を信じた私の拳は、そう簡単に砕けやしないわよ」

その言葉が契機だった。
オレ達は一気に駆け寄り、その拳を、互いに向けて振り上げた。



【15年後】


スクランブル交差点は、あの時とは違い、大勢の人でごった返していた。
自分の職場や学校へと忙しなく向かう彼らは、もはやここで大規模な闘争が起きたことなどなど覚えていないだろう。

オレはビルの屋上から、アリのように群がる彼らを見下ろしていた。

「お前が守りたかった奴らは、お前のために祈る時間もないってよ」

15年前の今日。
オレとの死闘を経て、あの女は死んだ。
しかし、彼女の墓はどこにもない。その死を悼む者すらいない。
それが、自分の身を挺してまで何かを守ろうとした正義のヒロインの、なれの果てだ。

「ボス。ここにいらしたんですか」

オレが振り向くと、そこにはアゲハがいた。
ウェーブがかった長い髪に、知的な顔つき。黒いスーツを着こなす姿は、さながら美人秘書といったところか。
推定年齢は二十代後半。とはいえ、オレ達に肉体の年齢は関係ない。
身体を特定の姿に変身できるオレ達にとって、その身体を実年齢より若くすることは容易だった。
現にオレも、今は高校生の年齢にまで若返り、人間社会に溶け込んでいる。

「オレはもうボスじゃねえって言ってるだろ」
「何を仰っているんですか。悪の組織はボスがいてこそですよ」
「悪の組織自体、もう解体してるじゃねえか」

正義のヒロインを打ち倒し、世界を手にしたオレ達は、悪から人間の代表へとなり代わった。
悪の組織からランス党へと名称を変え、政権を握り、事実上の征服を果たしたのだ。

「それで? 今度の選挙も、もちろんうまくいくんだろうな」

途端に、アゲハがもじもじと身体を動かし始める。
怪訝に思っていると、ビルの側面に埋め込まれた大型ビジョンから、ニュースが聞こえて来た。

『え~、今回の世論調査により、ランス党の支持率は3割を切りました。ランス党に政権交代してから、過去最低の支持率です』

オレは天を仰(あお)いだ。

「申し訳ありません!」

アゲハの土下座は、今まで何十回とオレにしてみせた経験も相まって、非常にスピーディーで形の整ったものだった。

「……原因は?」
「以前から進めていた地底人との融和交渉が芳しくないことを受け、外交政策に問題があるんじゃないかと人間共がわめきだした始末でして……」

オレはにこりと笑った。
それを見て、アゲハは頭を打ちつけるように、額を地面にこすりつけた。

「なぁ、アゲハよ。その件に関しては、以前からオレが指摘していたはずだよな?」
「お、仰る通りです……。ですが最近、人間に媚びへつらうような政治体制に嫌気が差している者も多く、こちらも手一杯なんです」

アゲハが、おずおずとオレを見上げる。

「そもそも、人間社会の仕組みをできるだけ変えないようにすることに無理があったんですよ。そのせいで、人間共は明らかに調子に乗り始めています。先の闘争に敗北したことも忘れ、自分達を庇護するのが当然だと言わんばかりの態度です。……これは、当時のボスの命令が不適切だったということにもなるのでは?」

じろりとオレが睨むと、アゲハは即座に頭を下げた。
しかし、彼女の言うことも一理ある。こいつらがオレの指示に従わないことも、オレが組織から離れた者である以上、仕方のないことかもしれない。

「……オレがなんとかする。だからさっさと消えろ。今は一人になりたい気分なんだ」
「……本当ですか?」
「ああ。だから──」

アゲハは突然、オレに抱きついてきた。

「ありがとうございます! ありがとうございます! ボスをどうにかして動かして来いと上から強く言われていて、もうどうしようかと──」

オレがアゲハを蹴り飛ばすと、彼女はおずおずと屋上から出て行った。
バタンと扉が閉まる音が聞こえる。
誰もいないこの場所で、オレは広大な空を見上げた。

そうさ。全てオレがなんとかしてみせる。これは、オレの作った世界なのだから。
オレは大きく息を吸い込み、叫んだ。

「人間共に与した結果がこれだ! オレは正しかった。間違っていたのはお前だ‼ 世界は、オレ様のものなんだよ‼」

オレの叫び声が、空にむなしく響いた。
十五年。何度も同じ言葉を叫び続け、それでもオレの心は収まらなかった。
それどころか、時間が経つにつれて、この空虚さは増していく。

支持率が下がったからなんだ。人間共が生意気だからどうした。
あの頃に比べたら、どんな事件もたかが知れてる。
事あるごとに邪魔をされ、何度も煮え湯を飲まされて、しかし誰よりも崇高な想いを掲げ続けた女は、既にこの世にいないのだから。

「……つまらねぇ」

オレは小さくぼそりとつぶやくと、懐から一本のリンドウの花を取り出し、それをビルの外へと放り投げた。

ヒーロー小説の冒頭を変えてみた


前回書いた『悪の組織のボスが、正義のヒロインを育ててみた』の冒頭を少し改稿したので、こちらに載せておきます。


<本文>

そこに集まった面々は、誰もが人間とは思えない、異様な出で立ちをしていた。
蛇のように細い身体でとぐろを巻いている者。一頭身の丸い身体から、小さな手足が伸びた毛むくじゃらの怪物。

姿形も様々な彼らは全員、固唾を飲んでリビングの液晶テレビに見入っていた。

『え~、今回の世論調査により、ランス党の支持率は3割を切りました。ランス党に政権交代してから、過去最低の支持率です』

その瞬間、リビングが大ブーイングに包まれた。

「ふざけるなぁ! こっちがどれだけ苦労してると思ってるんだ‼」
「外野から文句を飛ばすことしかできない無能のくせに!」
「くたばれ人間共!」

化け物達の罵声が飛び交う中、唯一人間の姿をしたオレは、リビングテーブルに置かれたワイングラスをゆっくりと手に取り、それを傾けた。
怪物達は、地団駄を踏み、天井を飛翔し、金切り声をあげている。
オレは大きく息を吸った。

「うるせえええええ‼」

オレの叫び声が響き渡り、怪物達は静まり返った。

「お前ら仮にも悪の組織の一員だろうが! 他人の評価に文句言う暇があるなら給料に見合った仕事くらいしやがれ! 分かったな⁉ 分かったら、肩を落としてすごすごとオレの家から退散しろ! 近所迷惑だ!」

オレが一喝すると、彼らは肩を落とし、すごすごとリビングから出て行った。
小さくため息をつき、ソファにもたれかかると、ふいにオレの両肩に手を置く者がいた。

「まあまあ。そんなに怒らないでくださいよ、ボス。彼らは彼らなりに頑張ってるんですから」

肩をもみながら猫なで声でオレを諫(いさ)めるその女を、オレは睨んだ。
人間と同じ体格だが、全身が黒い外骨格で包まれ、背中には蝶のような色彩鮮やかな羽根が生えている。その顔は外骨格と二つの巨大な複眼に覆われていて、妖艶な唇だけが露出していた。

「アゲハ。オレはもうボスじゃねえって言ってるだろ。この姿を見て分かんねえのか? オレはもう闘争とか政治とか、そういう暑苦しいものから引退したんだ。下らない世間の抗争からリタイアし、遅い青春を楽しむ一介の真面目な高校生なんだよ」

アゲハはリビングテーブルに置かれたワイングラスを見つめながら、「ふーん」とつぶやいた。

「で、一体何の用だよ」

オレが仕方なく促してやると、アゲハは待ってましたと言わんばかりに柏手を打った。

「はい♪ 実はですね。そろそろボスに戻ってきて欲しいと思いまして」
「はぁ?」
「今回の世論調査の結果はですね。地底人との融和交渉が芳しくないことから、外交政策に問題があるんじゃないかと人間共がわめきだしたのが原因でして。我々だけでは、どうにも手に負えないのです。人間共を巧みな手腕で黙らせ、怪物と罵られていた我々ランスの復権を実現したボスに、再びあの頃のように組織を束ねて頂いて──」
「知るか! なんでオレ様が人間共に頭下げながら政治なんかやらなくちゃならねえんだ!」
「しかしボス」

突然、アゲハがずいと顔を近づけた。
何を考えているのか分からないアゲハの複眼は、間近で見ると少し不気味だった。

「元々、ランスが世界を手にした時、人間の社会をできるだけ変えないようにと我々に仰せつかったのは、他でもないボスではありませんか。今回人間共が調子に乗っている件は、ボスの命令が不適切だったということにもなるのでは?」

従順なフリをして、時々こういう痛い部分を刺してくる。
オレがアゲハを苦手とする理由の一つだ。

「詭弁だ詭弁だ! お前らは面倒事をオレに押し付けるつもりなだけだろうが! そのくらい自分達でなんとかしやがれ‼」

さすがにオレの意思が固いことを感じたのだろう。
アゲハは、しゅんと項垂れながら帰ろうとした。
その哀愁漂う後ろ姿を見て、オレは思わず舌打ちした。

「……気が向いたらこっちで少し動いてやる。いいか? 気が向いたらだぞ」

アゲハはくるりと振り向くと、突然抱きついてきた。

「ありがとうございます! 一生ついていきます、ボス~‼」
「だからボスじゃねえって言ってるだろ」

その反応の素早さから、恐らくこうなることを予期していたのだろう。
女狐め……。
オレは心の中でそう愚痴った。



小説家になろう
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新作『悪の組織のボスが正義のヒロインをプロデュースしてみた』を完結させた


僕はずっと、自分が駄目な人間だと思って生きてきた。
中学高校と引きこもりになった時に、親から毎日言われ続けた言葉がきっかけだ。

今ではそれが間違っているということを知っている。
僕はたぶん平均以上に他人を思いやる心があるし、親がそんなことを言ったのは、ある種のパニック状態になったからだと理解している。

好きに生きればいい。
他人なんて気にせず生きればいい。
本当に心の底からそう思っている。

けれど、必ずどこかで心のブレーキがかかる。
親から言われた言葉が、今もべったりと心に張りついている。


僕は学校に行くことすらできないクズだと感じて、不安や恐怖に襲われることがある。
僕がやろうとしていることは正しいと感じていながら、僕自身、それが間違っていると感じている。

どうすればこの思い込みから脱却できるのか。
僕は小説を書きながら、今でも悩み続けている。



『正しい』と『間違っている』の関係は、『正義』と『悪』の構図そのものだ。
『正義』には『悪』を裁き、主張する権利がある。

でも、『正義』が本当に正義であるという保証は誰がしてくれるのだろうか。

目上の人?
周りの人間?
それとも大衆?

答えは否だ。
何故なら、誰にとっても正しいことなど、この世には存在しないからだ。

もしもそんなに世界が単純なら、きっと今頃、世界平和が実現している。
そうならないのは、僕達が『悪』と認識する人々にも正義があるからだ。


『正義』には、『悪』の正義を踏みにじる権利があるのだろうか。
『悪』には、正義のために人を傷つける権利があるのだろうか。


『正しい』と『間違っている』の狭間で、ずっと揺れ動いている僕だからこそ、何かが書けるのではないかと思った。
今作のヒーローものは、そういう意図で書いたものだ。

そして僕なりに、『正義』と『悪』という戦いの縮図を、どうやって解決するべきなのかを結論付けた。


反論はあるだろうし、ピンとこない人も多いだろう。
もしかしたら、誰にも伝わっていないかもしれない。

でもその結論を思いついた時、確かに僕の心は救われた。

「クズでもいい」と親に言ってもらいたくて、年甲斐もなく泣きながら頼んだりもして、それでも叶えられなかった夢の代わりが見つかった。


この先どうなろうとも、最後は叶えられなかった夢を思って死ぬだけだと思っていた僕に、最後に微笑むことのできるビジョンをくれた。


この作品はウケなかった。
色々と雑なところはあるし、持て余した設定も多い。
それでも僕は、この作品は傑作だと信じている。


もしもお暇な方がいたら読んでみてください。
絶対に損はさせないとは言えないが、きっと何かしら得るものがあるはず。

少なくともこの作品は、一人の人間の人生に希望を与えるだけのパワーがあるのは確かだから。

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